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11.06.27:
【連載】
わしら「チャンドマニ」を語る! vol.2
---チャンドマニ村で魂を洗う---
いよいよ間近に迫ったチャンドマニツアー!亀井監督と古木カメラマンの制作秘話、第2弾はチャンドマニツアーにむけてのお二人の意気込みを語ってもらいました。チャンドマニ村の魅力を、ちょっぴり先取りします!
(わしら「チャンドマニ」を語る!vol.1はコチラ)
亀井:あとひと月ばかりでチャンドマニ上映ツアーがありますが、そもそも、ぼくら何年ぶりにチャンドマニ村に行くことになるのかな。
古木:あれは2008年の2月に撮影に行ってるんですよね。
亀井:てことは……3年半ぶり!?
古木:信じられないですね。
亀井:ぼくらのチャンドマニ村のイメージは、この映画がすべてなわけや。
古木:そういうことになりますね。
亀井:でもさ、2回の撮影で行った2008年の2月と11月のあいだでも、モンゴルにはそうとうの変化があったよな?
古木:首都ウランバートルにビルが軒並み建ってたり、広告がたくさん並んでたりっていう変化にもびっくりしたんですけど、やっぱりチャンドマニ村の電話のことが何より驚きでしたね。
亀井:ぼくらが1回目の撮影で行ったときは、電話をしようと思ったら郵便局にいって、番号を言うのよね。そしたら接続してくれるお姉さんがいて、機械であれこれやってくれるわけ。それでやっとつながって、備え付けの電話ボックスに入って、そこではじめて電話ができたんだよね。だけど、半年後に行ったら、みんな携帯電話持ってた(笑)。
古木:郵便局は、ただの郵便局になってましたよね。
亀井:まあ本来の姿やな(笑)。だから今はもっとすごいことになってるかもしれん。もしかしたら、ネットカフェになってるかもしれんよ!?
古木:あはは(笑)。
亀井:あと、噂によると、主人公のザヤーが結婚して子どもがいるとかいう話だよ。
古木:信っじられないですねえ。撮影のときは、学生あがりの男の子っていう感じだったのに。
亀井:2回の半年の撮影の間にも、かなり太ったりして恰幅がよくなってたからね。。もしかしたら、すごくゴツくなってるかもしれんね。
————ということは、今回のツアーでは、ザヤーさんにも会えるんですね?
亀井:そうですね。ツアーのためにいろいろ準備をしてくれているはずですよ。ザヤーのホーミーが生で聴けると思うね。
古木:上手に鳴ってるんでしょうかね(笑)。
亀井:さあ(笑)。もちろん、ダワージャブさん(ホーミーの名人)にも会えますよ。そういえば、古木ちゃんは夏のチャンドマニは今回が初めてになるんじゃないの? 撮影は真冬だったから。
古木:そうなんですよ。夏のモンゴル、すごくたのしみですね。亀井さんとキューバで出会って、モンゴルの写真や映像を見せてもらったのは、すべて夏の情報だったんですよね。空が高くて、草原がどこまでもつづいているみたいな。
亀井:雲も連綿とつづいてるみたいなね。
古木:そんなモンゴルのイメージがあって、その場所に立ってみたいっていう思いがあったけど、実際の撮影は真冬のモンゴルで、過酷な撮影だった(笑)。
亀井:ぼくは、あのモンゴルの二面性が好きなのね。ふたつの美しさがあるよね。夏と冬のふたつの顔があって、その両方が自分の体験の中で合わさってるから、今回は古木ちゃんにも1年を通じたモンゴルの美しさを知ってもらえるんじゃないかと思ってるけどね。
亀井:今回のチャンドマニツアーは便利な交通手段で行くんじゃなくて、映画の中で出てきた旧ソ連の時代の「フルゴン」っていうバス、今の日本でいうミニバンっていうやつに乗って行くということが、もう最高のたのしみになってますね。
古木:まさかあれに乗っての旅行が実現するとは思ってなかったですね。
亀井:たぶん、これまでにないんじゃないですかね?
古木:はじめてのツアーかもしれませんよ。
亀井:実は、このフルゴンはキューバでも走ってたんだよね。キューバは社会主義国なんで、旧ソ連の時代に、あの車が海を渡ってキューバに入って、すごく大切にされてたんよね。
————映画の中で、みなさんが乗ってた車ですよね?
亀井:そうです。あの色使いとかもかわいくてね。
————乗り心地はいいんですか?
古木:撮影のときは、20人ぐらいでパンパンになって乗ってたんで、乗り心地がどうだったか……今は思い出せないですね(笑)。
亀井:モンゴルでは、人が乗るためにつくってない、壊れないようにつくってるだけだと言われていて。でも、天井はものすごく厚みのある布団のようなもので囲われていて、それが防寒にもなってるんだよね。あと、とにかく道が悪いから、頭をぶつけたりしても大丈夫だし。
古木:クッションになってましたよね。
亀井:逆に、ぼくらがいちばん最初にチャンドマニ村に行ったときはマツダのミニバンだったんよね。
古木:ああ、そうでしたね。
亀井:でも、マツダのミニバンは極寒のところを走る仕様になってないから、とにかく寒くて、車内なのに耐えられん状態だったよね。靴下も何枚も重ねて、ごっつい防寒靴も履いたんやけど、まったくダメでしたね。
古木:ほんっとにもう、足を冷凍庫に突っ込んでるような感じで、きつかったなあ。
亀井:だから、フルゴンの乗り心地が悪いとか言われてるけど、ぼく自身はすごくモンゴルに向いてる乗り物なんじゃないかなと思うんですよ。
古木:たしかに、フルゴンに乗ってる時の撮影は、寒かったとかきつかったとか感じませんでしたね。
亀井:独特の車内の雰囲気もあるから、たっぷり味わえたらいいね。
亀井:それとね、今回のツアーは本当にモンゴル人が旅して食事をとるようなところで、ぼくらも食事をすることになると思うんだけど、古木ちゃん、食事のことってなんか覚えてる?
古木:何もないところをずーっと走ってると、ちょこちょこって小屋みたいなのがあるんですよね。小さな町みたいなところに辿りついて、ゲルにみんなで入って食事しましたよね。
亀井:メニューがいちおうあんねんけど、焼きそばとか肉うどんみたいなものかな、日本で言うね。あとはお茶をのんでくつろげる空間ですね。
————お店なんですね。
亀井:ただ、店の形態のところもあれば、ゲルみたいなとこもあったかな。ぼくらは全然システムがわからなかったけれども、なんて言うかな……何百年とか何千年とかつづいてる食事をしたなって感覚はあったね。歴史の中で食事をしてる感覚というのかな。
古木:ぼくは、突然たどり着いた人の家に入っていって、座って静かにみんなでお茶を飲んでるっていう、あの体験がすごく印象深かったな。ツアーの中でも、またそういう光景が見れたり体験できたりしたらいいなあ。
亀井:そやねえ。そういえば不思議な体験もたくさんあったね。そのひとつが、木本先生に偶然会ったことやね。
古木:そう!
亀井:この映画の監修と翻訳をしていただいた木本文子(コラムhttp://www.chandmani.com/village.html)さんが、当時ホブドに住んでいまして、どうしても会いたかったんだけど、そのときホブドにおられなくて会えなかったんですよね。で、撮影の道中、車を止めて休憩をしていたら、向こうから大型のバスが来たんだよね。そこからなんと、木本先生が降りてきたんですよ!
古木:もう、信じられない気持ちでしたね。
亀井:偶然ですよ! ぼくと古木ちゃんはそれが初対面だったんですけど、もうびっくりする体験でしたね。
古木:木本先生に連絡もしていなかったのに……
亀井:思いつづければ願いは叶う、ということですかね。
亀井:古木ちゃんがはじめてチャンドマニ村に行ったのは、いつだっけ?
古木:フルゴンがチャンドマニ村に着いたシーンを撮影したときですね。
亀井:あのとき、ぼくは車の荷台に荷物と一緒に乗ってたんで、まったくチャンドマニ村の風景を見れてないんですよ(笑)。
古木:みっちり積んである荷物の隙間にからだを差し込んで、っていう (笑)。
————移動中ずっとそうした体勢だったってことですか!?
亀井:そう(笑)。50時間ぐらいかなあ。きつかったっすねえ。
古木:ぼくはカメラで道中撮影するってことで、外の風景をじーっと見ながらチャンドマニ村まで行かせてもらって、助手席にずっと乗ってたんですね。
亀井:とにかく映画の撮影っていうのは、いちばん偉いのは結局カメラマン。絵を撮らなあかんから。なので、監督は一番きついところにいるわけよ(笑)。
古木:おつかれさまです(笑)。
亀井:確かあのとき、明け方か夕方に撮影してたんじゃないかなあ。ふわーっとした光の中で。
古木:あれはですね、明け方だったと思うんですけど、雪原ですよね。雪の凍ったその世界をずっと走っていって、だんだん日が昇ってくるんですけど、その光がものすごく柔らかくて温かくて……とにかく、そうした光景の中を進んでいくわけなんですけど、ものすごく神秘的な感覚でしたね。
————すごく幻想的な光景だったんでしょうね。
古木:そうですね。その映像はばっちり映画の中で使われています。後半、ザヤーがチャンドマニ村に到着するシーンで、笛とホーミーを両方つかって演奏する音楽が出てくるところですね。
亀井:あれ、ちょうどこう気持ちよくなってくるところやから、ぼーっとしてしまうねんけどね。
古木:ぼくはあそこの映像がすごく好きなんですよね。「すごいのが撮れた!」っていう感覚があったから。
亀井:いい絵だよなあ。で、今回ツアーで行くときは夏だから、みんな村には住んでないと思うのね。遊牧やから、水のあるところにゲルで移動しながら散ってるわけね。でも、映画の中では冬だから、みんな村で密集して住んでたよね。
古木:そうでしたね。
亀井:当初は密集して住んでるもんだと思ってなかったから、ちょっとびっくりしたよね(笑)。
古木:思わず訊きましたよ、「遊牧民って草原の中で点々と住んでるものじゃないんですか?」ってね。
亀井:イメージと違ってたから、不思議な感じやったね。お隣さんがいるわけよ。
古木:村っていう感じになってましたもんね。
亀井:それで、古木ちゃんはチャンドマニ村の印象はどうやったん?
古木:厳しい大自然の中で、きゅっとこう固まって生きてるなって印象でしたね。撮影の2週間ほどを、現地の人と一緒に過ごしたけど、本当に素朴で美しい人たちだなと思いました。
————ちなみに、チャンドマニ村の人口ってどれくらいなんですか?
亀井:どうやろなあ……200人ぐらいってとこかな?
古木:村人全員に会えるって感じですよ。
————夏に行くと、ゲルがもっと点々としてるのでしょうかね?
亀井:夏は、ほんまに広い草原の中で1〜2軒とかで生活してますね。
————チャンドマニ村での上映会は、草原の中でするんですか?
亀井:上映はチャンドマニ村の公民館でします。ゲルが点在してる場所から歩いて15分から20分くらいのところにあるんです。10分そこらで町の中心部まで行けるエリアに、遊牧のゲルを建ててることが多いんじゃないかな。
古木:たのしみですね。そういうところを歩きながらね、いろんな人の家を見られるなんて。
亀井:ぼくの場合は……完全に魂を洗いに行くような感じですよ (笑)。
————今回の宿泊場所は、ゲルなんですか?
亀井:いま調整中ですね。泊まれたらいいですよね。
古木:ぼくらがチャンドマニ村に行ったときは、馬やラクダにも乗せてもらえたので、そんなこともあったらいいですね。
————では最後に、来月のチャンドマニ上映ツアーへの意気込みを!
亀井:おそらく2回目がないツアーですよね。はじめてこの映画をチャンドマニ村の人に見てもらうという、最初で最後の上映ツアーになるかと思います。最初はモンゴルへのぼく自身の旅から始まったのが、途中キューバで古木ちゃんと運命的な出会いを果たし、モンゴルでの映画撮影に至りました。この映画はまさに旅そのもので、最後にこのチャンドマニツアーという旅で、映画を完結することができるんじゃないかなと思っています。ぼくらと一緒にこの旅に参加してもらえるとうれしいですね。■
(チャンドマニツアーの詳細はコチラ) |
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11.04.03:
【連載】
わしら「チャンドマニ」を語る! vol.1
---カリブ海で誕生したモンゴルタッグ---
『チャンドマニ 〜モンゴル ホーミーの源流へ〜』が2010年3月に封切りされてから、約1年。今年7月には旅行企画チャンドマニツアーを決行することとなり、監督、スタッフ共々ますます力が入ってます。
ここで特別企画として、これまでのトークイベントではお話しきれなかった亀井監督と古木カメラマンの制作秘話を、あらためてお届け。映画「チャンドマニ」の感動は、まだまだ続きます!
第1回目の対談は、亀井監督と古木カメラマンが出会ったキューバの出来事を振り返ってもらいました。
亀井:ぼく自身のことは、上映時のトークショーでもかなり喋っているので、もう目新しくないんだけど、むしろ古木ちゃんが、キューバでぼくと出会って、「一緒にやってもええかな」と思ってくれたのが、正直ふしぎだなと。ほんまに。
古木:実は今日、キューバの出会いの話になるだろうなと思って、そのときに書いてた日記をひっぱり出してきたんです。
亀井:ええっ。あんのやー!
古木:あるんですね?(笑)。でね、亀井さんについて......
亀井:もしかして、書いてへんの?
古木:そう。ほとんど何も書いてない(笑)。ただ、日記に亀井さんの手書きメモがはさまっていて、メルアドと住所が書かれているんですけれど。
亀井:けど、なんやの?
古木:そのメモの最後に、「ハバナにて、芸術家」って書いてあるんですよ。
亀井:ええええっ。そんなこと書いてんのや、オレ......。
古木:笑。とにかく、2007年の3月ですね。ぼくらが出会ったのは。
亀井:もう、そんな前のになるんかあ。
古木:ぼくは、南米を旅してたんだけど、メキシコからキューバにやってきて一週間くらい経った頃だったかな。
亀井:キューバで何してたの?
古木:うーん、ハバナをぶらぶらして、出会った人と喋ってどっかに連れていってもらって、写真撮ったりとか......。
亀井:ほんなら、その時点では、まだハバナにしか行ってなかったってこと?
古木:そうですね。ぼくの旅は長かったから、全体がゆっくりペースだったんですよね。そのあとジャマイカにいく予定だったけど、キューバを旅のメインにしたかったから、ゆったり過ごしてましたね。
亀井:ぼくのほうはね、古木ちゃんにキューバで出会う半年前にモンゴルに行っていて、そのあとはずっとモンゴルで撮るだろう映画のことばかり考えてたんやね。メキシコ、キューバもそのあと旅するわけだけど、ノートに書いてあるのはモンゴル映画のことばかりで、中米の旅の間に、映画の構想を完成させているのね。だから、古木ちゃんと会うなり、「チャンドマニ」のアイディアをぶわーっと話したんだと思う。
古木:そうそう。
亀井:あとね、キューバとモンゴルって、共通点がないように思うかもしれないけれど、どちらも、もともと旧ソ連から影響をうけた社会主義国だから、似た匂いがあるわけ。「チャンドマニ」でみんなが乗るバスあるでしょ? あれと同じバスがキューバでも走ってる。意外だけれど、同じ雰囲気があるんだよね。
古木:そうなんですよね。当時のぼくには、そういう亀井さんの想いが自然に伝わってきた。ロードムービーで、かつ記録映画というものに、ぼく自身がすごくピンときたんです。
亀井:ぼくとの会話のなかで、映画が実現するっていう予感があったわけ?
古木:うーん、とくに雷がドカーンって落ちるみたいな衝撃的な出会いだったわけではないけれど、当時の自分には、すんなり入ってきたというか......うまく言葉にできないけど、何かが始まったんだみたいな感覚はあったんですよね。
亀井:もうひとつ古木ちゃんに聞きたいのは、おじいさんの話や。
古木:そうですね。この話はたしか初公開かな。
亀井:古木ちゃんのおじいさんは、モンゴルとつながり深い人やったんやろ?
古木:そう。ぼく自身は、「チャンドマニ」の撮影ではじめてアジアを訪れたんだけど、モンゴルには子どもの頃から馴染みがありました。というのは、ぼくの親父方のおじいさんが、戦前モンゴルにいたんです。
亀井:戦争前の話か。すごいな。
古木:じいちゃんはモンゴルで何をしていたかって、どうやらモンゴル人になりすまして情報を仕入れていたスパイだったらしいんです。
亀井:戦争が始まるか始まらないかって頃に、満州のほうで小競り合いがあったんだろうね。そういう時代に諜報活動をしてた人、という想像をしてるわけね?
古木:そう。じいちゃん自身は、仕事についてはあまり語っていないから正確なことは謎なんだけれど、じいちゃんがモンゴル語を話してたのはよく覚えてるし、現地で殺されそうになった話なんかも聞いて、子ども心に強烈に印象に残ってるんですよね。
亀井:ほお。
古木:とにかく、ぼくの家族にとって、じいちゃんという存在はすごく大きくて、みんなが尊敬している人でした。だから、キューバで会った亀井さんから「モンゴル」という言葉が出たとき、ピンときたんですよね。
亀井:じいちゃんが来た!って思ったの?
古木:これね、なんか変な話なんですけど......キューバに入る前のメキシコで、ぼくは高熱を出して、そのとき、じいちゃんを見たという感覚があったんですよ。
亀井:ほおお。はじめて聞いたわ、その話。
古木:グァナファトってとこに寝泊まりしてたときに風邪ひいて。
亀井:わかるわかる、メキシコの骸骨の街ね。
古木:でも安宿だから、自分で飯を食いに出かけなきゃならなくて。で、まあ坂の多い街だったから、途中でしんどくなって、広場で寝転がって空見てたんですよ。まっ昼間に朦朧とした頭で。そしたら、なんか空にじいちゃん見えるなと(笑)。
亀井:ええええっ。そういうことって、今までにもあったの!?
古木:ないですよ!
亀井:へえ。
古木:それで、そのあとすぐメキシコシティに戻って、キューバに飛んだんです。まるで、じいちゃんのお告げを受けたみたいに(笑)。
亀井:導かれし者やんけ!
古木:いや、実はね、じいちゃんが死ぬ前にも不思議なことがあってね。ぼくは当時イギリスに行こうとしていたんだけど、じいちゃんはかなり容態が悪くて、だから出発前にちゃんと挨拶していこうということになった。弱々しく寝ているじいちゃんの耳もとで、「行ってくるからね!」と言ったんです。そうしたら、ぜんぜん動けなくて喋れない状態だったじいちゃんが......
亀井:どないしたん!?
古木:ぼくの胸ぐらをガシっとつかんで、耳もとで「見てるからな!」って言ったんです。
亀井:おおお。
古木:びっくりでしょ!? じいちゃんとは、こういう最期の別れをしたんです。
亀井:じゃあ、ぼくとキューバで会ったとき、ぼくの後ろに、じいちゃんの存在を感じて、これはやらなきゃいけないと思ったりしたんだろうかね?
古木:うーん、いま思えば、そういう気持ちもあったのかもしれない。そもそも、南米の旅に出る前、ぼくは東京にいて、ファッションや広告を撮るフォトグラファーのアシスタントをやってました。ただ、その仕事がどうもピンとこなくて......だったら、とにかく今行きたいところに行ってみようと思って南米の旅に出た。その経緯で、亀井さんに会うわけですけど、亀井さんの旅の自由さとか、真剣にエネルギーを注いでいる感じに、ものすごく惹かれたんでしょうね。
亀井:まあ、ぼくもええ歳やから、まだこんなふわふわしてる人もおんねんで、という感覚が伝わったんかな。この歳になっても、こんな好き勝手やってる人がおるんや、こんな自由でええんやと(笑)。
古木:ぼくも、亀井さんに会ったとき、なんて自由な人なんだ!って思いましたよ。ドミトリーって6人部屋なんですけど、就寝になって部屋がまっ暗になったら、ある程度の秩序をもって静かにするでしょ、ふつう。でも、亀井さんたら、いきなりiPodにスピーカーつないで、松本人志のラジオを聴きはじめたんですよ。もう、びっくり(笑)。 ぼくはね、なんかそういうことできちゃう亀井さんに惹かれたんだと思うんですよ。
亀井:何をし出すんじゃ、こいつは!? と(笑)。
古木:そう(笑)。夜中、シーンとしたなかにラジオが流れていて、ぼくはずっと息を殺しながら笑ってたっていう......。
亀井:でも、これだけ聞いてると、キューバで出会ったときにすごく長く話してるみたいに感じるかもしれへんけど、実際はね、30〜40分話しただけだったと思うねん。
古木:そうそう、わりとさっぱりね。
亀井:オレはね、久しぶりの日本人やったし、もっと話したかったんだけど。でも古木ちゃんは翌朝はやくバスで出かけなきゃならんかったから。
古木:そうなんですよね。
亀井:朝起きたら、もう、おらんかったわ(笑)。
古木:でも、旅のテクニックを怒濤のように教えてくれましたよね(笑)。
亀井:そうそうそう。ぼくはおせっかいやから、「とにかくバイクを借りてキューバ中を走れ!」みたいなこと、言ったよね。
古木:さっきの日記にも書いてあるんですけど、1ページにでっかくどどーんと、「ジャマイカの、このチキン屋がうまい!」って亀井さんが地図を書いてくれてるんですよ。
亀井:でも、そこは行ってないやろ?
古木:行きましたよ!
亀井:え、まじで(笑)。
古木:ぼくね、そのあとの南米の旅は、亀井さんの助言にわりと忠実にしたがってるんですよ。
亀井:なるほど、その助言が適切やったから。
古木:ちょっと信用したっていうか......(笑)。
亀井:信用にあたいするやん、あのおっさんはと。
古木:そういうことにしておきましょうかね(笑)。ただね、漠然とだけど、この人と一緒に映画を撮るんだろうなって思ったし、おもしろくなりそうだと感じてる自分がいたんですよね。
(vol.2へ続く) |
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